この記事の結論

「ヒューマノイドロボットトレーナー」は、Figure AI・1X Technologiesなど海外の人型ロボット企業が実際に募集している職種です。中心となるのは、VRやセンサースーツを装着してロボットを遠隔操作し、AIモデルの学習データを集める役割(Figure AIでは「Humanoid Robot Pilot」時給32ドル、「Helix Data Creator」時給30〜33ドル、1Xでは「Operator - Data Collection」時給28〜36ドル)で、いずれも米カリフォルニア州の求人票に明記された条件です。より専門性の高い「強化学習エンジニア」型(Figure AI「Reinforcement Learning Engineer – Whole Body Control」年俸15万〜35万ドル)も存在します。ただし確認できた募集はすべて米国拠点・現地就労authorizationが前提で、日本国内向けの同種求人は本記事執筆時点(2026年9月17日)で確認できていません。

ヒューマノイド トレーナー職とは何か

「ヒューマノイドロボットトレーナー」あるいは「AIトレーナー」と呼ばれる職種は、人型ロボットの開発企業が公式に募集している実在の仕事です。ChatGPTのような対話AIが人間のフィードバックで応答を改善していくのと同様に、人型ロボットも「人間が実際にお手本の動きを見せる」「ロボットの行動を評価する」ことでAIモデルの動作を改善していきます。この、ロボットに動きを"教える"側の人材を指す言葉として、業界では「Pilot」「Data Creator」「Operator」といった名称の職種が実際に採用されています。

この記事で確認した内容

本記事は、Figure AI(採用ページはGreenhouse採用ボードで運用)と1X Technologies(採用ページはAshby採用ボードで運用)の公式求人票を2026年9月17日にcurlで直接取得し、実在するジョブタイトル・職務内容・提示賃金のみを掲載しています。旧稿にあった「年収帯」「求人増加率」「社員の1日のスケジュール」「経営陣の発言」といった数値・エピソードは出典が確認できなかったため、本稿では扱いません。日本国内での同種求人の有無についても、確認できた範囲を正直に記載します。

この職種には大きく2つの方向性があります。ひとつは、VRヘッドセットやモーションキャプチャー機材を装着してロボットを直接操作し、動作データを収集する現場型の仕事(体力・空間認識能力が中心で、プログラミング経験は問われません)。もうひとつは、ロボットの行動を評価する報酬関数や強化学習アルゴリズムを設計するエンジニア型の仕事(機械学習・制御工学の専門知識が必須)です。どちらも実在の求人票で確認できたため、以下で職務内容と条件を分けて紹介します。

なぜ「人がロボットを訓練する」仕事が生まれているのか

ヒューマノイドロボットに新しい動作をさせる方法は、大きく分けて「エンジニアが動作を1つずつプログラムで記述する」方法と、「ロボットに大量のお手本データを見せて学習させる」方法があります。Figure AIは自社のVision-Language-Actionモデル「Helix」の発表記事で、前者について「新しい動作をひとつ教えるだけでも、専門家による数時間規模の手作業のプログラミングか、数千回規模の実演データのいずれかが必要になる」と説明しており、家庭のような予測不能な環境でロボットを役立たせるには、人間による大量の実演データが避けて通れないボトルネックになっていると位置づけています。

この「実演データを大量に集める」工程を担うのが、VRやセンサースーツでロボットを遠隔操作する現場型トレーナーです。人間がロボットの"身体"を借りて実際に物を持ち上げたり扉を開けたりする動作を繰り返し、その一挙手一投足がAIモデルの学習データになります。ロボットが自律的に動けるようになるほど人手によるデータ収集の必要性は下がっていくとみられますが、少なくとも2026年9月時点では、複数の主要企業が実在の求人としてこの職種を大量採用している段階にあります。

仕事内容:実在する求人票から見る2つのタイプ

Figure AIと1X Technologiesの公式求人票を確認したところ、この職種には性質の異なる2つのタイプが存在します。以下、実際の求人票の記載内容にもとづいて紹介します。

タイプ1:遠隔操作・データ収集型(プログラミング不要)

Figure AIは「Humanoid Robot Pilot」という職種で、「学習中の人型ロボットと直接作業し、新しい振る舞いやスキルを教える。運用の最前線に立ち、AI学習用の新しいデータを収集し、AIチームと協力して動作を継続的に改善していく」役割を募集しています。業務内容として求人票には、テレオペレーション機材を装着してロボットを指定の動作に導くこと、収集したデータをAI学習システムにアップロードすること、収集中に気づいた問題をAIチームへ日次で報告することなどが明記されています。夜勤を含むシフト制で、日帰りから最長1か月規模の出張が発生する場合がある点も条件として記載されています。

同社の「Helix Data Creator」は、センサースーツを装着して人間らしい動きをロボットに実演させ、AIモデルの学習に使う高品質なモーションデータを集める職種です。求人票では「定められた『Ground Truth』動作プロトコルを一切の逸脱なく忠実に守る」ことが求められると明記されており、24時間体制で日勤・準夜勤・夜勤のローテーションを組んで運用されています。似た職種として「Humanoid Robot Operator」(商用サイトでのロボット運用・不具合の一次対応が中心)、「Humanoid Robot Operator & Data Creator」(顧客先の商用現場でロボット運用とデータ収集の両方を担当)もFontana(カリフォルニア州)などの拠点で募集されています。

1X Technologiesも「Operator - Data Collection」という職種を募集しており、求人票(構造化データ)によれば「データ収集オペレーションチームは、家庭用ロボットNEOの挙動を学習・改善するための高品質な実世界データを生み出す責任を負う」チームで、実際の業務はラボや住宅を模した環境でロボットを操作し、AIデータ生成のワークフローを支援し、収集データへのアノテーション(注釈付け)を行うことです。応募要件には「VR機材を安全に操作するため身長5フィート5インチ〜6フィート(約165〜183cm)であること」「最大50ポンド(約23kg)の持ち上げ・最大30ポンドの機材装着に耐えられること」という具体的な身体条件が明記されています。

プログラミング経験は不問

いずれの求人票にも、プログラミング言語やCS学位を必須とする記載はありません。求められているのは、決められた手順(SOP)を正確に反復できる規律性、VR環境での空間認識能力、長時間の立ち作業に耐える体力です。1Xの求人票では「ロボティクス・自律システム・AIデータ収集プログラムへの関与経験」は歓迎条件(Preferred)に留まり、必須条件(Minimum Requirements)ではありません。

なお、遠隔操作(テレオペレーション)そのものの技術方式や、物流・警備など他分野でのテレオペレーター職の詳細はテレオペレーターとは?ロボットを遠隔操作する未来の仕事で、ヒューマノイド以外も含めたロボットデータ収集員という広い括りでの解説はロボットデータ収集員とは?未経験から始められるAIロボット関連の新職種で、現場でのロボット運用そのものを担うオペレーター職の詳細はヒューマノイドロボットオペレーターとは?でそれぞれ別途まとめているため、本記事では重複を避け、"AIモデルを訓練する"という切り口に絞って解説します。

タイプ2:強化学習・アルゴリズム設計型(専門職)

もう一つのタイプは、ロボットの行動そのものを評価・調整する高度専門職です。Figure AIの「Reinforcement Learning Engineer – Whole Body Control」の求人票には、「人型ロボットの全身制御のための高度な強化学習アルゴリズムを開発・学習・デプロイ・評価する」役割と明記されており、業務として観測・行動・モデルの種類の選定、シミュレーションと実機の差異(Sim-to-Realギャップ)の解消、学習済みポリシーの性能評価指標の設計・検証が挙げられています。必須要件には、脚式ロボットなど力学・制御分野の強いバックグラウンド、PPOやSACといった強化学習アルゴリズムの実務経験、これらのアルゴリズムのハイパーパラメータや報酬関数(cost function)のチューニング経験が明記されています。

この職種は、旧稿が「Reward Engineer」という独自の呼称で紹介していたポジションに近い内容ですが、実際の公式求人票で確認できた名称は「Reinforcement Learning Engineer」です。勤務地はサンノゼ(カリフォルニア州)本社で週5日出社が条件として明記されており、テレオペレーション型のようなリモート・出張中心の働き方ではありません。

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給与:公式求人票に記載された条件(米国拠点)

いずれも「募集時に提示された条件」であり、日本の年収相場ではありません

以下は各社の公式求人票にそのまま記載されている米ドル建ての金額です。日本円は参考換算であり、公式に円建てで提示された金額ではありません(換算レートは為替情報サイトopen.er-api.comの2026年9月17日時点USD/JPYレート1ドル=155.58円を使用)。またこれらは米カリフォルニア州を拠点とする求人の条件であり、日本国内の給与水準と単純比較できるものではありません。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の職種分類にも、この職種に相当する区分は存在しないため、日本の公的統計から年収を算出することもできません。

企業職種(求人票の原文タイトル)雇用形態提示賃金(求人票記載)参考円換算
Figure AIHumanoid Robot Pilot6か月の有期雇用・フルタイム・時給制時給32ドルから約4,979円/時から
Figure AIHelix Data Creator6か月の有期雇用・フルタイム・時給制(夜勤は時給33ドル)時給30ドルから(夜勤+3ドル)約4,667円/時から(夜勤 約5,134円/時)
Figure AIHumanoid Robot Operator(Commercial Launch Team/Fontana拠点)契約社員から正社員登用を前提とした契約(contract-to-hire)時給30ドル約4,667円/時
1X TechnologiesOperator - Data Collection(Swing Shift)フルタイム時給28〜36ドル約4,356〜5,601円/時
Figure AIReinforcement Learning Engineer – Whole Body Controlフルタイム正社員年俸15万〜35万ドル約2,334万〜5,445万円

いずれの求人票にも「実際の提示額は経験・知識・スキルなど個々の要因により変動する」旨の注記があります。また現場型(Pilot/Data Creator/Operator)はいずれも時給制の有期雇用または契約社員としての募集であり、強化学習エンジニア型のようなフルタイム正社員の年俸制とは雇用形態が異なります。この待遇の違いは、ロボット業界の契約社員・派遣雇用全般の動向とあわせてロボット業界の契約社員・派遣求人ガイドでも確認できます。

応募要件:学歴・資格よりも身体能力とVR適性

現場型(Pilot/Data Creator/Operator)の求人票に共通する必須要件を整理すると、「優れた身体的協調性・空間認識能力・集中力」「1日8時間以上の立ち作業に耐えられること」「新しい身体動作を素早く習得できること」「建設的なフィードバックを前向きに受け止められること」の4点が中心です。1Xの求人票では、VR機材を安全に使用するための身長条件(約165〜183cm)や、最大50ポンド(約23kg)の持ち上げ能力といった具体的な身体基準も明記されています。学歴要件は明記されておらず、Figure AIの求人票は「ロボットや機械システムのトラブルシューティング経験」「VRヘッドセットの使用経験、または豊富なビデオゲーム経験(空間把握・目と手の協調のよい代替指標になる)」を歓迎要件(必須ではない)として挙げています。

一方、強化学習エンジニア型は専門職としての実務経験が必須です。前述のとおり、脚式ロボットの力学・制御分野での強い実績、PPO・SACなどの強化学習アルゴリズムの実装経験、ハイパーパラメータや報酬関数のチューニング経験が求められます。プログラミング言語の指定は明記されていませんが、複雑な制御プロジェクトを主導し後進を指導できる経験も要件に含まれます。いずれの職種にも、日本の国家資格や業界団体の認定資格は求人票上で一切求められていません。ロボット業界全般の資格・認定制度についてはロボット関連資格ガイドを参照してください。

この職種を募集している企業

2026年9月17日時点で公式採用ページから募集を確認できたのは、Figure AI(米カリフォルニア州サンノゼ本社)と1X Technologies(米カリフォルニア州サンカルロス本社)の2社です。Figure AIは採用ボードにGreenhouse、1X Technologiesは採用ボードにAshbyを使用しており、いずれも本記事のリンクから実際の求人票を直接確認できます。

他社の募集は確認できなかった

Tesla(Optimus)についても同種の職種が存在する可能性はありますが、本記事執筆時点でTeslaの公式採用サイトへのアクセスが技術的制限(403応答)により確認できませんでした。断定を避けるため、本記事ではTeslaの募集条件は扱いません。Boston Dynamics、Apptronik、Unitreeなど他のヒューマノイドロボット企業についても、本記事では個別に確認していません。企業ごとの採用動向は各社の公式採用ページで直接確認してください。

日本国内の求人状況:確認できたこと・できなかったこと

正直にお伝えすると、本記事執筆時点(2026年9月17日)で、Figure AIまたは1X Technologies本体が「ヒューマノイドロボットトレーナー」に相当する職種を日本国内で募集している事実は確認できませんでした。確認できた求人票はすべて米カリフォルニア州を勤務地とし、Figure AIの一部求人(Helix Data Creator)では「米国での就労資格を持つこと」が明記の要件になっています。1X Technologiesの求人票にもリモートワークに関する記載はなく、San Carlos(カリフォルニア州)での現地勤務が前提です。日本在住のままこれらの企業の現場型トレーナー職に就くのは、少なくとも確認できた求人票の条件上は難しいと考えられます。

日本国内の遠隔操作型ロボット企業(コンビニ商品補充ロボットなどを手がけるTelexistence社など)の採用ページも確認しましたが、本記事執筆時点で該当する募集は見当たりませんでした(ページ自体が動的に生成されており、掲載時期によって内容が変わる可能性があります)。日本国内でヒューマノイドロボット関連の研究開発ポジションを募集している主体としては、大手メーカー各社の研究開発部門がありますが、「トレーナー」「パイロット」に類する現場型の職種としての募集は確認できていません。トヨタ自動車・川崎重工業・ホンダなど国内メーカーの人型ロボット関連キャリアについては、関連記事で個社ごとにまとめています。

「確認できない」は「存在しない」ではありません

本記事は公式採用ページの直接確認にもとづいており、非公開の求人や、本記事作成後に新設された求人までは把握できません。日本国内での募集を検討している場合は、各社の採用ページやLinkedInで最新の掲載状況を定期的に確認することをおすすめします。

キャリアパス:求人票に明記された昇進ルート

Figure AIの「Humanoid Robot Pilot」の求人票には「高い実績を上げたPilotには、Senior Pilotや他のリードポジションへの成長機会がある(as they become available、ポジションの発生状況による)」と明記されています。同様に「Helix Data Creator」も「高い実績を上げたCreatorには、Senior Creatorや他のリードポジションへの成長機会がある」とされています。いずれも「6か月の有期雇用として始まり、貢献度と本人の意向次第で長期的な機会につながる可能性がある」という表現で、昇進や長期雇用への移行を保証するものではなく、あくまで機会がありうるという書き方になっている点には注意が必要です。

「Humanoid Robot Operator」(Commercial Launch Team/Fontana拠点)は、求人票の雇用形態欄に「contract-to-hire(正社員登用を前提とした契約社員)」と明記されており、契約期間中の実績を経て正社員化を目指す設計になっています。現場型から専門職への具体的なキャリア転換事例(社内異動の人数や実績)については、本記事執筆時点で公式に確認できる数値がないため、断定的な記載はしません。ロボット業界で未経験から専門職へキャリアを積み上げる一般的な考え方は未経験からヒューマノイドロボット業界へ転職する方法でも扱っているので、あわせて参照してください。

「ロボットに動きを教える」という広い括りには、本記事で扱った職種以外にもいくつかの呼び方があります。中国で急増しているとされる、ロボットの動作を実演して教える現場作業者は「サイバー労働者(Cyber Laborer)」と呼ばれることがあり、その実態や日本での展望はサイバー労働者とは?中国で急増する"ロボットの先生"という新職業の全貌で別途解説しています。本記事で扱ったFigure AI・1Xの求人は、いずれも英語圏(米国拠点)企業の公式募集である点が、中国発の同種の働き方とは異なります。呼び名や国・企業が違っても、「人間がロボットの動きを実演し、AIの学習データにする」という技術的な構造そのものは共通しています。

また、遠隔でロボットを操作する仕事全般(データ収集目的に限らない)はテレオペレーターとは?ロボットを遠隔操作する未来の仕事、現場でのロボット運用・監視・トラブル対応を専門に担う仕事はヒューマノイドロボットオペレーターとは?で扱っているため、本記事とあわせて読むと職種の違いが整理しやすくなります。

出典・参考情報

最終更新日: 2026年9月17日。求人票の内容・提示賃金は掲載企業により随時更新・掲載終了される場合があります。応募を検討する場合は、必ず各社の公式採用ページで最新の募集要項を確認してください。本記事の円換算は参考値であり、公式に円建てで提示された金額ではありません。