この記事の結論
ロボットAIエンジニアという職種区分を対象にした公的な年収統計は存在しません。本記事では、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和7年)の産業別・役職別データ、上場ロボットメーカーの有価証券報告書(全従業員平均)、そして本サイト自身の求人票に掲載されている募集時の提示額(実収入を保証するものではありません)の3種類の一次情報だけを使い、仕事内容・必要スキル・年収の考え方を解説します。断定できないレンジや順位はすべて削除しています。
ロボットAIエンジニアの年収の実態|2026年9月時点でわかること
「ロボットAIエンジニア 年収」で検索すると、職種別・経験年数別・企業別に細かく金額を断定した表が数多く見つかります。しかし、日本の公的統計(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)に「ロボットAIエンジニア」という職種区分は存在しません。ハローワークの職業分類にも該当区分はなく、民間の転職エージェントが公表する統計も「機械学習エンジニア」「AIエンジニア」といった広い括りが中心で、ロボット分野に限定した公開統計は確認できませんでした。
そこで本記事は、断定的な相場表を掲げる代わりに、実際に確認できる一次情報だけを積み上げます。使う情報源は次の3種類です。
本記事が使う3種類の一次情報とその限界
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和7年・2026年公表): 全国・全産業計、製造業、情報通信業といった大分類ごとの月額賃金は分かりますが、「ロボットAIエンジニア」のような職種を切り出した数字ではありません。
- 上場ロボットメーカーの有価証券報告書(EDINET・各社IR掲載分): 「平均年間給与」は開示されますが、これは設計・製造・営業・管理部門を含む全従業員の平均で、AIエンジニア職だけの数字ではありません。
- 本サイト自身の求人票に記載された提示年収: 実在する募集要項の金額ですが、あくまで「募集時点で企業が提示した額」であり、内定者が実際に受け取る金額(実収入)を保証するものではありません。掲載から時間が経っている求人は、既に募集が終了している場合もあります。
なお、ロボット業界全体(ハードウェア・SIer・オペレーター等を含む)の年収の考え方はロボット業界の年収の実態で、ヒューマノイドロボットのソフト/ハード/AI/組込みを横断した職種別の整理はヒューマノイドロボットエンジニアの年収相場で扱っています。本記事はAI・機械学習に特化した「ロボットAIエンジニア」という職種そのものに焦点を絞り、年収の断定よりも仕事内容・必要スキルの解説に重点を置きます。
ロボットAIエンジニアの仕事内容|何を設計・実装する職種か
「ロボットAIエンジニア」は法令や統計上の正式な職種名ではなく、求人市場で使われる通称です。本サイトの求人票で「AI・機械学習エンジニア」カテゴリに分類されている実際の募集要項を見ると、仕事内容にはおおむね次のような共通点があります。
知覚(Perception)とモーション生成
カメラ・深度センサー・触覚センサーからの情報をもとに、ロボットが周囲の物体や環境を認識するモデルを開発する業務です。Boston Dynamicsの求人では「3Dビジョン・点群処理または深度推定モデルの実装経験」が必須要件として挙げられており、点群処理・SLAM・3D物体認識が中核スキルになっています。
強化学習・模倣学習によるロボット行動の生成
ロボットに「どう動くか」を学習させる領域です。Preferred Networksの求人は仕事概要を「視覚・言語・触覚を統合したマルチモーダルモデルによる物体操作・タスク計画の研究」と説明しており、1X Technologiesの求人では「脳に相当するWorld Modelの研究開発から実機展開まで」を担当するとされています。強化学習・模倣学習(Diffusion Policy等)の理論と実装の両方が問われる領域です。
シミュレーション環境の構築とSim-to-Real転移
実機での試行錯誤にはコストと安全上の制約があるため、まずシミュレーション環境で学習し、その結果を実機に転移させる「Sim-to-Real」の手法が広く使われます。具体的な訓練環境の構築手法・ツール(Isaac Sim、MuJoCo等)はロボットシミュレーションエンジニアの職種解説で詳しく扱っています。
身体性AI(Embodied AI)・VLA(視覚言語行動)モデルの統合
大規模言語モデル・画像認識モデルとロボットの動作生成を組み合わせる「Vision-Language-Action(VLA)」領域は、2026年時点で採用側の求人票に頻繁に登場するキーワードです。この領域を専門に扱う職種としての詳しい解説は身体性AIエンジニア(Embodied AI)の解説記事を参照してください。本記事では、AI・機械学習全般を扱うロボットAIエンジニアという、より広い括りを対象にしています。
必須要件・歓迎要件から見る必要スキル|実際の求人7件を分析
本サイトに掲載されている「AI・機械学習エンジニア」カテゴリの求人票から、必須要件・歓迎要件として実際に書かれている項目を集計しました(2026年9月17日確認)。想像や業界慣習ではなく、募集要項に明記されている文言に基づいています。
学歴・実務経験の要件
必須要件として学位を求める求人が目立ちます。Toyota Research Instituteの研究職は「ロボット工学・機械学習・コンピュータビジョンの博士号」を必須とし、本田技術研究所の研究員職は「博士または修士(研究実績重視)」としています。一方でTeslaのエンジニア職は必須要件を「学士以上」と「実務経験4年以上」の2項目に分けて記載しており、学位より実務経験を重視する書き方です。「実務経験◯年以上」を必須とする求人が最も多く、目安は3〜4年でした。
技術スキル:PyTorch・強化学習・3Dビジョン・ROS
7件のうち4件(Preferred Networks・Boston Dynamics・1X Technologies・Tesla)が「PyTorchを用いた深層学習モデルの研究・実装経験」を必須要件に明記しており、7件中で最も頻出する技術要件でした(MUJIN・本田技術研究所・Toyota Research Instituteの3件には具体的なフレームワーク名の記載はありません)。加えて、強化学習または模倣学習(PFN・1X Technologies)、3Dビジョン・点群処理・深度推定(Boston Dynamics・MUJIN)、C++またはPython(MUJIN)が必須要件に含まれていました。ROS(バージョン番号の指定はなし)を用いた実機実験の経験は、PFNとBoston Dynamicsの2件で「歓迎要件」(必須ではない)として書かれていました。技術スキルの全体像と資格情報はヒューマノイドロボット業界で求められるスキル・資格一覧にまとめています。
語学力・論文実績
海外企業(Tesla、Boston Dynamics、1X Technologies、Toyota Research Institute)の求人はいずれも英語力を必須要件に含めています(表現は企業ごとに異なり、Teslaは「英語での業務遂行能力」、Boston Dynamicsは「英語でのコミュニケーション能力」と記載)。国内企業ではMUJINが「英語での技術文書読解・コミュニケーション能力」を必須要件としており、Preferred Networksと本田技術研究所は英語での研究発表・論文執筆に関する能力を歓迎要件として挙げています。また、Preferred NetworksとToyota Research Instituteは、NeurIPS・ICML・CoRL・RSS・ICRAといった具体的な国際会議名を挙げて論文採択実績を必須要件・歓迎要件に明記しており、本田技術研究所も「学術論文・国際会議での発表実績」を必須要件としています(会議名の指定なし)。AIエンジニアからロボティクスへの転職を具体的に検討している方はAIエンジニアがヒューマノイドロボット業界に転職するためのロードマップ、学習の順序を知りたい方はエンジニアのキャリアロードマップを参照してください。
ヒューマノイドロボット業界の求人をチェック
求人一覧を見る公的統計でわかること|「ロボットAIエンジニア」という統計区分は存在しない
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(2026年公表)は、日本標準産業分類の大分類ごとに賃金を集計していますが、職種としての「ロボットAIエンジニア」は存在しません。参考として、AI人材が多く所属する「情報通信業」と、ロボットメーカーが多く属する「製造業」、そして全国・全産業計の数値を並べます。いずれも一般労働者(雇用期間の定めのない者)の「きまって支給する現金給与額」(残業代を含む月額。賞与は含まない)です。
| 区分 | きまって支給する現金給与額(月額) | 対前年増減率 |
|---|---|---|
| 全国・全産業計(男女計) | 340.6千円 | +3.1% |
| 情報通信業(年齢計) | 406.0千円 | +3.8% |
| 製造業(年齢計) | 330.0千円 | +3.6% |
出典: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況(5)産業別にみた賃金」第5-1表(2026年9月17日確認)。月額であり年間賞与は含まないため、単純に12倍した数字が年収になるわけではありません。ロボットAIエンジニアの多くは「情報通信業」または「製造業」のどちらかに属する企業に所属しますが、統計上はこの2つの大分類のどちらか一方に「ロボットAIエンジニア」だけを取り出す方法はありません。
役職別データ|マネジメント職を目指す場合の目安
役職が上がるほど賃金が高くなる傾向は、全国・全産業計のデータでも確認できます。ロボットAIエンジニアがエンジニアリングマネージャー等のマネジメント職を志向する場合の一般的な傾向として参考にできます。
| 役職 | 月額きまって支給する現金給与額 | 非役職者との格差(非役職者=100) |
|---|---|---|
| 部長級 | 635.8千円 | 204.8 |
| 課長級 | 529.2千円 | 170.4 |
| 係長級 | 399.2千円 | 128.6 |
| 非役職者 | 310.5千円 | 100.0 |
出典: 厚生労働省「同調査(8)役職別にみた賃金」第8表(2026年9月17日確認)。全国・全産業計の数値であり、ロボット業界やAI職に限定した数値ではありません。
上場ロボットメーカーの平均年間給与|有価証券報告書(EDINET)で確認できる数字
上場企業は有価証券報告書で「従業員の状況」として平均年間給与(賞与・基準外賃金を含む)を毎年開示しています。国内の代表的な産業用ロボットメーカーであるファナックの平均年間給与(提出会社・第57期=2026年3月期)は1,144万4千円、安川電機(提出会社・第110期=2026年2月期)は859万9,531円でした。
この数字をロボットAIエンジニアの年収と読み替えてはいけない理由
- 設計・製造・営業・管理部門などすべての職種を含む全従業員(提出会社ベース)の平均で、AIエンジニア職だけを抜き出した数字ではありません。
- 安川電機は連結ベースで「ロボット」セグメントの従業員数を開示していますが、セグメント別・職種別の給与額は開示していません。
- Preferred Networks、MUJINといった非上場のロボティクスAIスタートアップは有価証券報告書が存在せず、平均年間給与を確認できる公式情報はありません。
対象期・出典URL・確認日を含めた詳しい表と、有価証券報告書の読み方はロボット業界の年収の実態にまとめています(本記事では同じ表の再掲を避け、要点のみ記載しています)。
求人票に見る提示額の例|「募集時の提示額」であって実収入ではない
本サイトの求人票に実際に掲載されているAI・機械学習エンジニア職の提示年収を、企業名・勤務地とあわせて紹介します。これらは求人掲載元(各社の採用ページ)が募集時点で提示した金額であり、内定者が実際に受け取る金額(基本給・賞与・税引き後の手取り等)を保証するものではありません。
この表を読むときの注意
- 海外拠点の求人は「USD換算」「NOK/USD換算」と記載のとおり、為替レートや換算時点によって円換算額が変動します。
- 「RSU含む」「ストックオプション含む」と記載がある求人は、基本給だけでなく株式報酬を合算した金額です。基本給の内訳は個別に確認が必要です。
- 下表の求人はいずれも掲載日が2026年3月21日、応募締切が2026年6月21日と記載されており、本記事の確認日(2026年9月17日)時点で締切を過ぎています。すでに募集が終了している可能性があるため、金額の傾向をつかむ参考情報としてのみご利用ください。最新の募集状況は各求人ページでご確認ください。
| 求人タイトル | 企業 | 勤務地 | 提示年収(募集時点) |
|---|---|---|---|
| Embodied AIリサーチエンジニア | 株式会社Preferred Networks | 東京都(フルリモート可) | 800万〜2,000万円 |
| AIエンジニア(ロボットハンド・マニピュレーション) | 株式会社MUJIN | 東京都(一部リモート可) | 700万〜1,600万円 |
| ヒューマノイドロボット研究員(全身動作・知覚) | 本田技術研究所 | 埼玉県和光市 | 700万〜1,400万円 |
| AI/ML Engineer - Robot Perception & Manipulation | Boston Dynamics | 米国マサチューセッツ州 | 1,800万〜2,700万円相当(USD換算) |
| Machine Learning Engineer - Whole-Body Control | 1X Technologies | ノルウェー(リモート可) | 1,500万〜2,400万円相当(NOK/USD換算) |
| Machine Learning Engineer - Optimus Robot | Tesla, Inc. | 米国カリフォルニア州 | 2,250万〜3,750万円相当(USD換算、RSU含む) |
| Research Scientist - Large Behavior Models | Toyota Research Institute | 米国カリフォルニア州 | 2,250万〜3,750万円相当(USD換算) |
出典: physicalai-jobs.com 求人票(各求人ページに掲載元・掲載日・応募締切を記載。2026年9月17日確認)。7件はいずれも本サイトの「AI・機械学習エンジニア」カテゴリに分類されている求人です。求人一覧は求人を探すから確認できます。
勤務先タイプによる違い|日系企業・海外スタートアップ・研究機関
上記7件の求人票を見比べると、勤務先タイプによって報酬の「構成」に違いがあることが分かります(金額の水準ではなく、待遇・福利厚生欄に書かれている構成要素の違いです)。
- 日系企業(Preferred Networks、MUJIN、本田技術研究所): いずれもストックオプション制度や社会保険完備を明記していますが、報酬はおおむね円建ての基本給が中心です。
- 海外スタートアップ・研究機関(Tesla、Boston Dynamics、1X Technologies、Toyota Research Institute): 「RSU(株式報酬)」「ストックオプション」を明示的に待遇欄に記載しており、USD等の外貨建て表記になっています。
いずれの求人も学位や実務経験3年以上を必須要件としており、未経験者向けの求人ではありません。未経験からロボット業界に入る一般的な入口(オペレーター職・データ収集職・テレオペレーター等)は未経験からロボット業界に入る方法、ロボットデータ収集員の仕事内容、テレオペレーター(遠隔操作)の仕事内容で紹介しています。また、AIではなく機械設計・制御を専門とするロボットエンジニアについてはハードウェアエンジニア職の解説を参照してください。
提示を受けたときに確認したいこと
金額の相場を断定することはできませんが、実際にオファーを受け取った際に確認しておくべき点は、求人票の記載事項から一般的に整理できます。
- 基本給と変動報酬の内訳: 「年収◯◯万円」という表記が、基本給だけを指すのか、ストックオプション・RSU・賞与を含む総額(トータルコンペンセーション)を指すのか、書面で確認します。
- 外貨建ての場合の換算基準: USD/NOK等で提示されている場合、どの時点の為替レートで円換算されるかは企業ごとに異なります。求人票の「相当」という表記は目安であり、確定額ではありません。
- 有価証券報告書の数字はあくまで会社全体の平均: 応募先が上場企業の場合、有価証券報告書の「平均年間給与」を参考にする際は、それが全従業員平均であり、職種別の内訳ではない点を踏まえて判断します。
- 複数の募集要項を比較する: 同一職種でも企業によって必須要件・歓迎要件の水準が異なるため、複数の求人票を並べて確認すると、自分の経験がどの水準に近いかを把握しやすくなります。30代・40代からのキャリアチェンジ事例はキャリアチェンジの解説記事で紹介しています。
出典・参考情報
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(2026年公表・令和7年6月分調査)
- 厚生労働省「同調査(5)産業別にみた賃金」第5-1表
- 厚生労働省「同調査(8)役職別にみた賃金」第8表
- ファナック株式会社「第57期有価証券報告書(2026年3月期)」(従業員の状況)
- 株式会社安川電機「第110期有価証券報告書(2026年2月期)」(従業員の状況)
- physicalai-jobs.com 求人票(Preferred Networks、MUJIN、本田技術研究所、Boston Dynamics、1X Technologies、Tesla、Toyota Research Instituteの各求人ページ)
最終更新日: 2026年9月17日。有価証券報告書の数値は対象期末時点のもの、求人票の提示額は掲載時点のものです。各社の最新の開示内容・募集状況は、各社IRサイトおよび各求人ページでご確認ください。本記事は特定の職種・企業の年収を保証するものではありません。