この記事の結論
ロボット業界の年収は職種や勤め先で大きく異なりますが、「ロボット業界の平均年収」を示す公的統計は存在しません。本記事は厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和7年)や上場ロボットメーカーの有価証券報告書など、実際に確認できる一次情報だけをもとに、年収の実態、未経験からのキャリアの選び方、年収を上げるために有効とされる取り組みを解説します。
ロボット業界の年収概況【2026年最新】
「ロボット業界の平均年収」を検索すると具体的な金額を断定するページが数多く見つかりますが、日本の公的統計に「ロボット業界」という区分は存在しません。日本標準産業分類は「製造業」「情報通信業」のような大分類・中分類でしか集計しておらず、ロボットメーカー・SIer・スタートアップを横断した「ロボット業界」の平均賃金を国が公表しているわけではないのです。
そこで本記事では、確認できる範囲の一次情報を積み上げて実態に近づく方法を取ります。まず土台になるのが、厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(2026年公表)です。一般労働者(雇用期間の定めのない者)の「きまって支給する現金給与額」(残業代を含む月額。賞与は含まない)は、全国・全産業計で男女計340.6千円、男性373.4千円、女性285.9千円でした。ロボットメーカーの多くが属する「製造業」に限ると330.0千円で、全産業平均よりやや低めです(同調査「産業別にみた賃金」、2026年9月16日確認)。
| 区分 | きまって支給する現金給与額(月額) | 対前年増減率 |
|---|---|---|
| 全国・全産業計(男女計) | 340.6千円 | +3.1% |
| 全国・全産業計(男性) | 373.4千円 | +2.8% |
| 全国・全産業計(女性) | 285.9千円 | +3.9% |
| 製造業(年齢計) | 330.0千円 | +3.6% |
出典: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(2026年公表・令和7年6月分の調査)。上記は月額であり、年間賞与その他特別給与額は含みません。年収を単純に「月額×12」で計算した数値ではない点にご注意ください。
この記事の数値の考え方
- 「ロボット業界」単体の公的統計は存在しないため、代わりに(1)製造業全体の公的統計、(2)実際にロボットを作っている上場企業の有価証券報告書、の2つを並べて示します。
- 有価証券報告書の「平均年間給与」は会社全体(事務・管理部門を含む)の平均であり、エンジニア職だけの数字ではありません。この点は本文中で毎回明記します。
- 非上場企業(Preferred Networks、MUJIN等)や海外企業(Tesla、Figure AI等)は、日本向けの職種別給与を公式に開示していません。本記事では「開示がない」という事実を明記し、金額を推測では書きません。
「ロボット業界」という統計区分は存在しない
厚生労働省の賃金構造基本統計調査は、日本標準産業分類の16大産業(建設業、製造業、情報通信業など)を基本単位に集計しています。ロボットメーカーは「製造業」の中の「生産用機械器具製造業」等にあたりますが、結果の概況で公表される表は16大産業レベルまでで、中分類(生産用機械器具製造業など)ごとの年収は概況PDFには掲載されていません。より細かい産業分類・職種分類の数値はe-Stat(政府統計の総合窓口)の統計表一覧から個別の統計表を確認する必要があります。「ロボット業界の平均年収」を具体的な一つの数字で断定しているサイトを見かけたら、その数字の出典(どの統計のどの表か)を確認することをおすすめします。
年収の差を生む要因|職種別にみる仕事内容と専門性
ロボット業界の求人は、専門性の方向性によっていくつかのタイプに分かれます。ここでは金額のランキングではなく、それぞれの仕事内容と、年収に影響しやすいとされる要素を整理します(具体的な金額の横並び比較ができる公的データは無いため、本記事では金額の順位付けは行いません)。
身体性AI・制御系エンジニア
強化学習・模倣学習を用いてロボットの行動生成モデルを開発する「身体性AI(Embodied AI)エンジニア」や、モデル予測制御(MPC)・全身制御(WBC)などを扱う制御エンジニアは、実装経験者が少なく求人での引き合いが強い領域とされています。ROS2やSim-to-Real Transferの実務経験が問われることが多く、詳しい仕事内容は身体性AIエンジニアの解説記事やROS2エンジニアの求人動向で確認できます。
ロボットソフトウェア・組込みエンジニア
ロボットの制御ソフトウェアやファームウェアを開発する職種です。C++・Pythonに加え、実機でのデバッグ経験が重視されます。詳細はソフトウェアエンジニア職の解説とハードウェアエンジニア職の解説を参照してください。
SIer(システムインテグレーター)・導入支援職
大手メーカーのロボットを工場の生産ラインや物流拠点に組み込む仕事です。ティーチング(動作教示)、治具設計、顧客との折衝など現場対応力が求められます。仕事の流れはロボットSIerの解説記事、導入提案・営業職は導入支援・営業職の解説記事にまとめています。
保守・整備、オペレーター、フリートマネージャー
稼働中のロボットの保守・修理を担う整備職、現場でロボットを運用・監視するオペレーター職、複数拠点のロボット運用を統括するフリートマネージャー職は、未経験から入りやすい入口として位置づけられることが多い職種です。それぞれ保守・整備職の解説、オペレーター職の解説、フリートマネージャー職の解説で仕事内容を紹介しています。
未経験・入門者から入るには
ロボット業界は実務経験が評価されやすく、未経験からのキャリアインも可能とされています。代表的な入口は、ロボットの運用・監視を担うオペレーター職、AI学習用データを収集・アノテーションするデータ収集職、遠隔操作でロボットを操作するテレオペレーターなどです。
現場での経験を積んだうえで、ROS2やPythonなどを学習し、保守・整備職やSIerのジュニアポジションへのキャリアチェンジを目指す、という流れが一般的なルートとして紹介されています。学歴よりも実務経験や資格が重視されやすい点は、この業界の特徴の一つです。
ヒューマノイドロボット業界の求人をチェック
求人一覧を見る働き先の種類で変わること|大手メーカー・SIer・スタートアップ・外資系
同じ職種でも、勤め先が大手メーカーか、SIerか、スタートアップか、外資系かによって、給与制度や報酬の構成(基本給・賞与・株式報酬の比率)は大きく異なります。ここでは、それぞれの特徴のうち、公式に確認できる情報だけを紹介します。
大手ロボットメーカー|有価証券報告書で確認できる平均年間給与
上場企業は、有価証券報告書で「従業員の状況」として平均年間給与(賞与・基準外賃金を含む)を毎年開示しています。国内の代表的な産業用ロボットメーカーであるファナックと安川電機について、直近の有価証券報告書に記載された数値は次のとおりです。
| 企業 | 対象期 | 従業員数(提出会社) | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|---|---|
| ファナック | 第57期(2026年3月期) | 4,842人 | 40.0歳 | 15.3年 | 1,144万4千円 |
| 安川電機 | 第110期(2026年2月期) | 3,114人 | 42.7歳 | 17.6年 | 859万9,531円 |
出典: ファナック「第57期有価証券報告書(2026年3月期)」48ページ「従業員の状況」、安川電機「第110期有価証券報告書(2026年2月期)」9ページ「従業員の状況」(いずれも2026年9月16日確認)。
この数字の読み方に関する注意
- 「提出会社」単体(連結子会社を除く本社ベース)の全従業員の平均であり、役員報酬は含みません。
- 設計・製造・営業・管理部門などすべての職種の平均です。ロボット制御エンジニアだけを抜き出した数字ではありません。
- 安川電機は連結ベースで「ロボット」セグメントに4,728人が所属していることを開示していますが(2026年2月28日現在)、セグメント別の給与額は開示されていません。
なお、旧稿では「ファナックは推定1,000万円超」「安川電機のエンジニア職は650万〜1,000万円」としていましたが、これは出典のない推定でした。実際の有価証券報告書の数値(全従業員平均)に置き換えています。
SIer(システムインテグレーター)
ロボットSIerは、大手メーカーの産業用ロボットを工場や倉庫の既存ラインに組み込む専門企業群です。中堅・非上場のSIerが多く、企業単位の平均給与を横並びで比較できる公的データは確認できませんでした。仕事内容や必要スキルはロボットSIerの解説記事で詳しく紹介しています。
スタートアップ(Preferred Networks・MUJIN等)
Preferred Networks(PFN)やMUJINといった国内のロボティクス・AIスタートアップは、いずれも非上場のため有価証券報告書が存在せず、平均年間給与を確認できる公式情報はありません。スタートアップは基本給に加えてストックオプション(SO)が報酬パッケージに含まれることがある点が特徴とされますが、未上場企業のSOはIPOまで価値が確定しないため、基本給の水準を必ず確認することが重要です。求人の傾向はスタートアップ求人の解説記事、資金調達の動向は2026年の資金調達動向まとめを参照してください。
外資系企業(Tesla・Figure AI・Boston Dynamics等)
Tesla(Optimus)、Figure AI、Boston Dynamics、Agility Roboticsなどの海外企業について、日本拠点や特定部門に限った給与水準を裏付ける公式資料は確認できませんでした。米国本社の報酬(ベース給・ボーナス・RSU等を合算したTotal Compensation)を紹介する求人比較サイトはありますが、ロボティクス部門固有の数値かどうかを検証できなかったため、本記事では具体的な金額は掲載しません。実際の募集条件は、各社の求人ページで確認するのが最も確実です。本サイトでは主要企業の求人動向を継続的にまとめています。
ロボット業界の成長性|IFR統計にみる市場の実態
年収そのものではありませんが、業界の採用ニーズを考える手がかりとして、国際ロボット連盟(International Federation of Robotics、IFR)が毎年公表する「World Robotics」統計を紹介します。2025年9月に公表された最新版(2024年分データ)によると、世界の産業用ロボットの年間設置台数は10年前の2倍以上に拡大しています。
| 指標 | 世界 | 日本 |
|---|---|---|
| 2024年の年間設置台数 | 542,000台 | 44,500台(前年比-4%) |
| 2024年末の稼働台数(ストック) | 4,664,000台(前年比+9%) | 450,500台(前年比+3%) |
| 2025年の見通し | 575,000台(+6%予測) | 低い一桁%の緩やかな増加 |
| 2028年の見通し | 700,000台超え | (国別の予測数値は非公表) |
出典: International Federation of Robotics「World Robotics 2025 report – Global Robot Demand in Factories Doubles Over 10 Years」(2025年9月25日公表、2026年9月16日確認)。対象は主に産業用ロボット(工場向け)で、サービスロボットやヒューマノイドロボットは別区分で集計されています。
設置台数・稼働台数の増加は、ロボットの導入・保守・運用に関わる人材需要が中長期的に拡大しやすいことを示唆しますが、これは求人数の増減に関する材料であり、個々の年収が上昇することを保証するものではありません。旧稿にあった「2035年に市場規模380億ドル(Goldman Sachs予測)」「2026〜2030年に年収が25〜150%上昇」という記述は、出典を確認できなかったため削除しました。
年収を上げるために有効とされる取り組み
個別の金額を保証するものではありませんが、キャリア相談や求人業界で一般的に有効とされる取り組みを、金額の断定を避けて整理します。
1. 需要の高い専門スキルを身につける
ROS2、強化学習・模倣学習、MPC・全身制御(WBC)などの制御工学、機能安全規格(ISO 13482等)は、求人票で頻繁に条件として挙げられるスキルです。どのスキルがどの職種で求められるかは必要スキル・資格の解説記事とエンジニアのキャリアロードマップで確認できます。
2. 転職で市場価値を確認する
複数社の選考を並行して受け、提示条件を比較することは、自分の市場価値を把握する手段として一般的に推奨されています。30代・40代からの転職事例はキャリアチェンジの解説記事で紹介しています。
3. 副業・フリーランス案件を活用する
副業が認められている企業に勤めている場合、技術顧問やROS2講師などの形で副収入を得る選択肢もあります。金額は案件ごとに大きく異なるため、本記事では具体的な相場は掲載しません。就業規則で副業の可否・条件を確認することが前提になります。
4. 英語力を身につける
英語ができると、外資系企業の日本拠点や海外スタートアップのリモートポジションへの応募機会が広がります。海外企業のリモート求人の探し方はリモートワークの解説記事とリモート求人の解説記事にまとめています。
5. マネジメント職への移行
日本全体でみても、役職が上がるほど賃金は高くなる傾向があります。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」によると、全国・全産業計の一般労働者(雇用期間の定めのない者)の月額きまって支給する現金給与額は、非役職者310.5千円に対し、係長級399.2千円、課長級529.2千円、部長級635.8千円でした。
| 役職 | 月額きまって支給する現金給与額 | 非役職者との格差 |
|---|---|---|
| 部長級 | 635.8千円 | 204.8(非役職者=100) |
| 課長級 | 529.2千円 | 170.4 |
| 係長級 | 399.2千円 | 128.6 |
| 非役職者 | 310.5千円 | 100.0 |
出典: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況(8)役職別にみた賃金」(2026年公表、2026年9月16日確認)。全国・全産業計の数値であり、ロボット業界に限定した数値ではありません。
6. 提示条件を書面で確認する
内定時の年収交渉では、口頭でのやり取りだけでなく、確定した条件をメール等の書面で確認することが基本とされています。「◯◯万円でご提示いただいた内容で相違ないか」を送るなど、認識の齟齬を防ぐ一般的な実務です。交渉によって何%上がるかは個別の状況次第のため、本記事では数値を示しません。
出典・参考情報
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(2026年公表・令和7年6月分調査)
- 厚生労働省「同調査(1)賃金の推移」
- 厚生労働省「同調査(5)産業別にみた賃金」
- 厚生労働省「同調査(8)役職別にみた賃金」
- ファナック株式会社「第57期有価証券報告書(2026年3月期)」(従業員の状況)
- 株式会社安川電機「第110期有価証券報告書(2026年2月期)」(従業員の状況)
- International Federation of Robotics「World Robotics 2025 report – Global Robot Demand in Factories Doubles Over 10 Years」(2025年9月25日公表)
最終更新日: 2026年9月16日。有価証券報告書の数値は対象期末時点のものです。各社の最新の開示内容は各社IRサイトでご確認ください。本記事は特定の企業・職種の年収を保証するものではありません。